モルドバ、また西側ヒロイン対親ロシア悪代官(笑)の図式

マイア・サンドゥさん

モルドバの大統領選は、事前の世論調査では親ロシアの現職イゴール・ドドンさんが圧倒的有利で、ドドンさん自身も「1回目投票でかたがつくだろう」と自信を示していましたが。箱を開けると親EU・米国のマイア・サンドゥさんが得票率36.12%と、同じく32.61%のドドンさんに約5万票の差をつけて1位と番狂わせの展開となりました。1回目投票で大統領を決定するには50%の得票が必要なので、最終的な勝敗は11月15日の決選投票で決まることになります。

挑戦者のサンドゥさんは経済学者で、元教育省大臣、元首相ですが、ハーバード大学卒で2010-2012年にはワシントンで世界銀行のエグゼクティブ・ディレクターのアドバイザーも務めていた「筋金入り」の親西側であり、様々な発言からも反ロシア色は明らかです。サンドゥさんが勝利した場合にはロシアにとっては影響力の大幅な低下は避けられません。まあ、ロシアがそれを黙って見ているかという懸念も大きいですが。

また、西側政治家からの支持も強く、欧州人民党のドナルド・トゥスク党首(前欧州理事会理事会議長)は「サンドゥさんは、誠実で能力があり、モルドバを成功に導くだろう」とか言ってますし、ドイツ与党CDUのアンネグレート・クランプ=カレンバウアー党首も「サンドゥさんはこの困難な使命に適任だ」とエールを送っています。

サンドゥさん自身は「この選挙には、反ロシア候補ではなく、反腐敗候補として、そして誠実な人々のための候補として出ています」と述べており、同女史の行動・連帯党(PAS)の公約には司法改革、減税、景気と雇用の刺激、不均衡な外交の是正などが入っています。外交に関しては「ドドン大統領のロシアのみとの関係改善の政策によって、対米・対EU関係は悪化の一途です」と述べている通り西側重視は明確です。1回目の投票では、サンドゥさんは首都キシナウの有権者や、イタリア、米国、ロシア、ルーマニアなどの在外有権者の支持でリードしています。

決戦投票でどちらが勝つかは予断を許しませんが、選挙結果次第ではドラスティックな展開になる可能性があります。汚職・腐敗でも批判されているドドンさんに対して、ウクライナのような大規模デモが発生する可能性も皆無ではありません(政治的にかなり大人しい人が多い感じなので、なさそうな気もしますが)。また、大規模な刑事訴追が行わる恐れから、現政権の主要政治家の亡命につながる可能性もあります。

ドドンさんとプーチンさん

ただ、たとえサンドゥさんが勝利したところで、前途はかなり厳しそうです。西側との「欧州統合」への舵を切ることが想定されますが、欧州最貧国といわれるモルドバとEU諸国では格差が大きすぎてメリットに比較して相当に大きい経済的ショックが予想されます。また分離独立派の沿ドニエストル地帯(トランスニストリア)の問題も簡単に片付く問題ではありません。また、いずれの候補が勝つにしても政権が行き詰まり混乱状態になれば、西側とロシアの対決の場になりかねません(特に米国でバイデン候補が勝った場合には)。

大人しい、田舎の国なので、平和な発展を望みたいところですが。。。しかし、ベラルーシもそうですが、反対側はちょっとカッコいい女性で、親ロシアの現職はいかついおじさんという図式は何とかならんでしょうか。もう見ただけで、正義のヒロイン対悪代官という西側ステレオタイプにぴったりすぎるのですが。

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