プリゴジンの死を望んだプーチン

プリゴジンの「反乱」後、「お咎めなし」の状況に当惑していた向きも、プリゴジンの「処刑」でやっと「安心」(?)した感がある今日この頃ですね。私も、このままお咎めなしなのではないかと感じていたのですが、やはりカタギには全然分かってないですね。ジャクソンホール会議も無事終わり、仕事地獄も一段落したところで、プリゴジン墜落死に関して、フォーリンアフェアーズ誌に安定のスタノワヤ氏へのインタビューが掲載されていたので少し紹介します。

スタノワヤ氏

フォーリンアフェアーズ誌:今知られている事から、墜落が意図的なものであった可能性をどう見るか?

スタノワヤ:プーチンが墜落に関係があると考えるに十分な理由がある。しかし、たとえ本当に事故であったとしても、ロシアのエリートや高官はこれを報復行為であるとみるだろうし、クレムリンとプーチン個人も、そのような疑念を煽ることに関心があるだろう。プーチンはプリゴジンを「裏切り者」と呼んでいたので、ロシアの政治階層の多くの保守派は、反乱後のプーチンのプリゴジンに対する甘さにショックを受けていた。プリゴジンはベラルーシとロシアの間を自由に往来し、プーチンとクレムリンで会談していた。プーチンは何事もなかったかのように彼に自由な生活を許した。ショックを受けていた人々は今、「プーチンの論理がわかった 」と言えるだろう。プーチンは弱々しくは見えない。彼は支配を取り戻しつつあるように見える。

プーチンは過去に何度か、裏切り者は死ななければならないと語っている。彼らは残酷な死を迎え、苦しまなければならないと。しかし、プリゴジンは典型的な裏切り者ではない。たしかに反乱の後、プーチンは国家が外部からの侵略に直面しているときに、あえて国家に挑戦した人物だと言った。しかし、「人は戦争中に正気を失うものだ」とも言っている。プリゴジンに対する彼のアプローチは、意図的に祖国を裏切った人物に対するものよりも少しソフトだった。

しかし結局のところ、プーチンにとっての叛乱後のプリゴジンの価値は疑問だった。プリゴジンがプーチンに関わる内部情報を持っているので、プーチンはあえて彼を排除しなかったのだという向きもあったが、私はそれには懐疑的だった。では、彼を周りに置いておく意味はあったのだろうか。プーチンがプリゴジンを容赦する唯一の理由は、ウクライナとシリアでの彼の軍事的な功績だった。しかし、それで本当に彼を許すことができたのであろうか。墜落が起きる前から、私はプーチンが彼を排除する方法を見つけるだろうと考えていた。おそらくは物理的な方法ではなく(プーチンがそれを良しとするとは思えなかった)、外務省、GRU、FSBの誰であろうと、時間をかければプリゴジンが持っているものすべてを奪う方法を見つけるだろうと考えていた。しかし、現実には、物理的に、これが起こっている。

フォーリンアフェアーズ誌:プリゴジンの死で得をするのは誰か?

スタノワヤ:多くの人だ。プリゴジンを国家の脅威と考える人々にとって、彼の死は正義の象徴だ。軍部、シロビキ、公安、保守派、タカ派など、プリゴジンが行き過ぎたと考える人々すべてにとって、これは起こるべきことだった。だから、そうではない、とプーチンとクレムリンが国民を説得する努力をするとは思えない。

フォーリンアフェアーズ誌:ワグネルはこれからどうするのか?

スタノワヤ:露系テレグラムでは、これが事故ではないなら、国家によるかなりリスキーな行動であり、プリゴジン支持者の不満や怒り、否定的な反応を呼び起こす可能性があるという見方がある。私見だが、重大な反応は見られないだろう。反乱前にはプリゴジンに同情的だった人々も、彼が国に挑戦したときには失望した。人々は、このような困難な時期に波風を立てるべきではないと考えていた。世論調査を見ても分かるが、叛乱前にはプリゴジンに多くの同情が集まっていたが、叛乱後はそれが消散した。多くのロシア人がプリゴジンに背を向けたのは、「国防省の腐敗を攻撃したり、テレグラム・チャネルで軍を批判するのはいいが、国家に反抗してはならない」と考えたからだ。だから、クレムリンに対する重大な反乱や、親プリゴジン、親ワグネル的な何かが起こるとは考えていない。ちょっとしたエピソードはあるかもしれないが、重要なものはない。

フォーリンアフェアーズ誌:支持者はプリゴジンを殉教者として見るだろうか?

スタノワヤ:そうは思わない。プリゴジンは怒れる男で、付き合いやすい人間ではなかった。彼を継いで活動を続けようとするファンがいるとは思えない。プリゴジンを信じていた者たちでさえ、彼に起こったことは、彼がやったことを繰り返そうとする者への警告であるとみなすだろう。特に今までプリゴジンの近くにいた人々は震え上がるだろう。想像すれば分かるが、次は自分の番だと思うだろう。

フォーリンアフェアーズ誌:プリゴジンの死は、ウクライナにいたワグネル部隊にとって何を意味するか?

スタノワヤ:ワグネルは現在ベラルーシにあり、その部隊はアフリカとシリアで活動の一部を続ける可能性がある。しかし、ウクライナへの扉は閉ざされた。ワグネル指揮官の中には、数カ月後にプーチンが彼らを呼び戻し「誤解していた。君たちが必要だ。戻ってこい」と言うことを望んでいた者もいたが、それはないものねだりだった。

フォーリンアフェアーズ誌:今後、事情が明らかになる中で、何に注目しているか?

スタノワヤ:ロシアのテレビがこの状況をどのように報道するか注意している。彼らがプリゴジンとそのレガシーについて語るときの口調によって、クレムリンがどのように世論を形成しようとしているかが分かるだろう。ワグネルとプリゴジンが戦争で果たした役割について、どの歴史を残し、どの歴史を書き換えるのか。また、公式の捜査の展開、つまり、事件の無害なバージョンを提示しようとするのか、事件の重要性を軽く扱うのか、などの点にも注意している。

また、テレグラム・チャネル上で、愛国的保守派がこの事件にどう反応するかも注目される。国防省を批判するグループの反応はどうであろうか。一定の感情的な憤りを示すであろうか?プーチンに怒りを覚えるだろうか?途方に暮れるのか?彼らのセンチメント、そしてそれへのクレムリンの対処も興味深い。また、一般のロシア人の投稿も注意だ。彼らは今回の事件を重要な出来事だと考えているのか、またそれをどう感じるのか。そしてもちろん、ベラルーシのワグネルがどうなるかにも注意が必要だ。

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