前回に続いて緊張高まるウクライナについてですが、ちょうど独立系のレバダ・センターによるロシア内での世論調査の結果が出ていたのでメモ代わりに残しておきます。
まず、東部ウクライナにおける緊張をエスカレートさせているのは誰か、という質問ですが、これは米国とNATO諸国と回答した人が50%でダントツで、続いてウクライナが16%となっており、ロシアと回答した人はわずかに4%、ウクライナ東部2州(というのが正しいのか東部2共和国と言うべきか分かりませんが)と回答した人が3%となっています。その他では「特に誰とも言えない」が11%、「回答できない」が15%などとなっています。
西側諸国で同じ調査をすれば、おそらく8割方ロシアという回答がかえってくると思いますが、これがロシア国内での現実認識であると思います。現実認識は日ごろ触れる情報によって形成されるものであり、ロシア内での情報ではロシアは中立の(あるいは、当然のこととして関与の権利を有する)和平仲介者であり、米国とNATO、そしてウクライナがロシアの不利になるように騒ぎを起こしている、ということです。
この手の調査では常に年齢層によって回答が大きく異なっていますが(おそらくは触れるメディアの違いによるものと思われますが)、興味深いことに今回の調査では回答の傾向は年代を問わず共通しており、ウクライナに関する認識が深く刷り込まれていることが伺われます。ただ、最も若い年代(18-24才)では米国とNATOを張本人とする回答は24%とやや低くなっています(ロシアと回答した人は相変わらず4%と少数ですが)。
さて、この緊張の帰結としてロシアとウクライナの戦争が起こると思うか、という質問に対しては、3%が「不可避」、36%が「極めて可能性が高い」とほぼ4割の人が戦争になる可能性が高いと回答しています。それに対して、38%の人が「可能性は低い」、15%の人が「可能性はない」と回答しており、見方はほぼ半々に分かれていると言えます。ただ、これらの人が交渉の現状をどう把握しているのかはまったく分かりません。ロシアのニュースを見ている限り、プーチン大統領が交渉でバイデン大統領を追い詰めているような論調も見られるので楽観的な見方もあるのかもしれません。
まあ、このようにウクライナに関する認識はロシアの内外でほぼパラレルワールドと言えるくらいに異なっています。これはまさしく危険なサインですが、このギャップが埋まることはまず期待できないように思います。