フェミニスト反戦レジスタンス:マニフェスト

Феминистского Антивоенного Сопротивления

ロシア国内の世論調査では依然として戦争への賛成は全般的に強く、反戦活動は相変わらず盛り上がらず、というか盛り下がっている印象すらあります。組織的な活動は徹底的に取り締まられているし、個人に関しても、締め付けはきついし、周りからのバックラッシュも難儀だし、今も声を上げているのは本当に少数の強者か変わり者という感じがします。

こんな中でも、頑張り続けている団体の一つに「フェミニスト反戦レジスタンス」(Феминистского Антивоенного Сопротивления)があります。開戦直後に結成された若いグループですが、急速に拡大しロシア国内だけで45の支部ができており、公式テレグラムの購読者も3万人を超えています。海外にも支部ができているようで、欧米だけではなく韓国にも支部があるようです。

厳しい締め付けの中で、急速に拡大した理由として、政府が伝統的にフェミニスト運動を政治的活動と認識しておらず、他のグループに比較して当局の死角だったから、ということが言われていますが、おそらくそれだけではないでしょう。グループは「戦争は最初に放たれる銃弾で始まり、和平合意で終わるものではありません。戦争は日々の家父長制的な暴力の連続の中で起こる爆発であり、この日々の暴力に対して、戦争と軍国化に対する戦いで対抗しなくてはならないのです・・・」と言っています。

コーディネーターのエラ・ロスマンさん

前回の投稿で触れたメドヴェーデフ先生も、戦争に関するコメンタリーの中で、ロシアに内在する暴力肯定の側面の問題については繰り返し述べておられますが、グループは「・・・これが、フェミニストの反戦運動が、現在(そして歴史を通じて)、ロシアでこれほど強い理由です。フェミニストは、暴力に対して最も敏感なグループなのです」と書いています。

以下に、このロシアの「フェミニスト反戦レジスタンス」のマニフェストを掲載します。何と、戦争開始の次の日に発表されています。尚、このマニフェストの英文訳がJacobinに掲載されていますが、ここでは、このグループのオリジナルのロシア語版から訳しています(英文版とは少しだけ内容が違いますが、おそらく英語版ができたのが後だからだと思います)。


フェミニスト反戦レジスタンスマニフェスト

2月24日、モスクワ時間の午前5時半頃、ロシアのプーチン大統領は、ウクライナにおける「非武装化」と「非ナチ化」を目的とした「特別作戦」を発表しました。この作戦は何カ月も以前から準備されており、何カ月にもわたってロシア軍はウクライナ国境に移動していたのです。その間も、わが国の指導者は攻撃の可能性を否定していました。今となって分かる通り、これは嘘でした。

ロシアは、隣国に対して自決権も平和な生活の希望も認めず、新たな宣戦布告を行ったのです。これは初めての宣戦布告ではありません。過去8年間、ロシア連邦の主導で戦争が続いていること、そしてドンバスでの戦争はクリミアの不法な併合の結果であることを、私たちは知っています。ロシアとその大統領は、ルハンスクとドネツクの人々の運命を気にしておらず、また気にしたこともなく、8年後のこれら両共和国の承認は、解放という目標を口実にしたウクライナ侵略のために必要だっただけである、と私たちは確信しています。

政治的勢力としてのフェミニズムは、戦争、特に侵略戦争の側に立つことはできません。フェミニズムは、社会の発展、弱者の救済、機会や物の見方の拡大、そして暴力の減少、人々が平和に共存することを支持するものです。

戦争とは、暴力、貧困、強制移住、生活の破壊、不安、将来の展望の消滅です。それはフェミニスト運動の本質のすべてに反するものです。戦争は、ジェンダーの不平等を増大させ、長年にわたる人権のすべての進歩を帳消しにする力があります。戦争は身体的暴力だけではなく、性的暴力ももたらします。歴史からは、戦時においては、女性がレイプされる危険性が数倍に増大することが示されています。これらの理由、そして他の多くの理由から、ロシアのフェミニスト、そしてフェミニストの価値観を共有する人々は、わが国の指導者が始めたこの戦争に対して強く反対の声を上げる必要があるのです。

プーチンの演説が示しているように、現在の戦争はまた、ロシアが世界に広める決意であると見られる、政治的イデオロギーである「伝統的価値」の旗印の下で、それに反対する者や異なる見解を持つ者に対する暴力を以て進められています。この「伝統的価値」がどのようなものであるかは、批判的に考えることができる人なら誰でもよく理解しています。これは、とりわけ、女性の搾取と、そして狭い家父長制的な規範を超えた生き方、自己決定、活動をする人々に対する戦いに基づいたものです。その歪んだ規範を称揚し、デマゴギー的な「解放」を進める願望によって、隣国の侵略が正当化されていることも、ロシア全国のフェミニストが全力でこの戦争に抵抗しなければならないもう一つの理由です。

現在、フェミニストは、ロシアにおける数少ない活発な政治勢力の一つです。長い間、私たちは当局から政治運動として認識されていなかったため、一時的に他の勢力よりも弾圧の影響を受けることが少なかったのです。カリーニングラードからウラジオストクに至るまで、全国で45以上のフェミニストグループが活動しています。私たちは、フェミニストグループと個人のフェミニストたちに、フェミニスト反戦レジスタンスに参加し、力を合わせて戦争とそれを始めた政府と戦うように呼びかけています。私たちには数多くの仲間がおり、力を合わせれば多くのことが可能です。過去10年間、フェミニスト運動は、メディアや文化の面で大きな力を築き上げてきました。今こそ、この力を政治的な力に変える時です。私たちは、戦争、家父長制、権威主義、軍国主義に反対します。私たちは未来であり、私たちは勝利するでしょう。

2022年2月25日
フェミニスト反戦レジスタンス


以上が、オリジナルのマニフェストの訳ですが、英語版ではこの後に、全世界のフェミニストへの呼びかけが追加されています。

私たちは、全世界のフェミニストに、以下を呼び掛けます:

  • ウクライナの戦争とプーチンの独裁体制に反対して、独自の活動をオーガナイズし、平和的なデモンストレーションへの参加、オフライン・オンラインの運動を行ってください。資料や刊行物にフェミニスト反戦レジスタンス運動のシンボルや、ハッシュタグ #FeministAntiWarResistance、#FeministsAgainstWarを、ご自由にご使用ください。
  • ウクライナでの戦争とプーチンの侵略に関する情報を拡散してください。今、全世界がウクライナを支援し、プーチン体制へのいかなる形での支援も拒否する必要があります。
  • このマニフェストを他の人に伝えてください。フェミニストがこの戦争、そしていかなる種類の戦争にも反対していることを示す必要があります。また、プーチンの体制に反対して団結する、ロシアの活動家が依然として存在することを示すことも極めて重要です。私たちすべてが現在、国家による弾圧の危険にさらされており、皆さんの支援を必要としています。

韓国には既に支援グループがあるようですが、日本のフェミニストの方もいかがでしょうか。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です