エリツィン前大統領のお付きの写真家だった、ドミトリー・ドンスコイさんが亡くなったそうです。1991年から1997年にかけて エリツィン 大統領のお付きの写真家を務め、ロシア写真ジャーナリズムの伝説とまで呼ばれ。161もの国際的な賞を受賞しています。ロシア国内で唯一「Excellence FIAP」のタイトルを保持する写真家でもありました。
1960年モスクワ大ジャーナリズム学部を卒業し、1961年から2006年まではАПНとРИА Новостиの特派員であり、1975年から2015年はモスクワ大ジャーナリズム学部で教鞭をとっていました。エリツイン大統領のお付きの写真家になったのはクレムリンで仕事で受付で待ってる時に偶然にエリツインとコルジャコフが通りかかって、コルジャコフがドンスコイさんをエリツィンに紹介して「大統領のお付きの写真家になってみない?」とか言ったのがきっかけだったそうです。いかにも、ええかげんなエリツィン時代を思わせるエピソードです。
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ドンスコイさんも、さすがにエリツインさんの写真家だけあって(?)武勇伝にはこと欠かないようで、特に中国のの江沢民主席がクレムリンに来た時の中国の報道写真家たちとの乱闘(?)は語り草になっているようです。外交の報道写真にも一応の外交儀礼があり、所定の順番で待っていたロシアの写真家たちの前に中国の写真家の一団が割り込んできたために、ドンスコイさん思わず自分の前にいた中国の写真家をぶん殴ったら相手は消えてしまったとか後で話をしてます。両首脳の面前での乱闘にエリツインさん「これはいったい何ごとや」とか言ってたらしいです。
ドンスコイさんは、お付きの写真家というよりはエリツィンの家族の一員といってもいいくらいだったそうで、写真も政治行事の時のものだけではなく、家族とのバケーションや私的なものも多く残されています。
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いやあ、いい写真ですね。私は個人的にかなりエリツィンさん好きなんですが、こっちも楽しくなってくる写真です。ところで、ドンスコイさんの有名な写真といえば、第1次チェチェン紛争の時にロシア兵の前でむせび泣いているエリツィンさんの写真ではないでしょうか。当時ロシアは装備の質と人員で大きく劣るチェチェン相手に大苦戦で、ロシア軍撤収時のこの写真は大きく取り上げられました。
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これはすごい写真ですが、実は後日談があり、ドンスコイさんによるとエリツィンさんは顔にとまってた蚊をたたいただけなんだそうです。ドンスコイさんは超望遠レンズでエリツィンさんを追っていて、エリツィンさんは顔にとまった蚊にはまったく動じず話してたらしいんですが、蚊が動こうとするときに思わずたたいてしまったようでドンスコイさんも思わずシャッターを押してしまったということらしいです。最初、ドンスコイさんはこの写真を出す気はなかったらしいんですが、これを見た同僚が「あほか!すぐにコンクールに出せ!!」ということで有名になったということです。
最後は、ドンスコイさんの訃報にふさわしい、エリツィンさんの写真を。慰霊碑に花をささげるエリツィンさんですが、今の大統領のそれらしい演出とは異なり、何か心を打つものを感じます。ドンスコイさんのご冥福をお祈りします。
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